NF合宿ピストブログぶりにこんにちは、2回の石川です。 最近KUGCの公式Twitterが元気になってきましたね。いろんな部員が各々合宿中の出来事をつぶやいています。ちなみに部員の間では誰がいいね数最高のツイートをするかで競争しています。 さて、先月のNF合宿で1st、2ndソロに出ることができました!「運が悪すぎてソロに出ることができない男」として某訓練所長すらも呆れさせるほど、待ちに待った初ソロでした。いや本当に。今回は半年に渡る私の初ソロ奮闘記です。 私の初・初ソロチャンスは今年6月、木曽川での強化合宿でした。この合宿の2週間前、もしかしたら総発数が70発に届くかもしれないということに気づき、大急ぎで小林教官にZoomで知識チェックを行っていただきました。チェックリストを小林教官と飛びに長野へ行く同期の鈴木に託し、合宿3日前にサインの埋まったチェックリストが完成。さあ、準備は整った。 肝心のフライトでしたが、合宿2日中1日目に飛んだ2発は中々のフライトでした。思い返せば、点と点を線で結んだような、フライトの流れというものを掴めたような気がしました。とはいえこの日はソロ出ず、4回生の先輩の初ソロフライトを眺めるに留まりました。記念写真を撮ったとき、自分の顔がひきつっていたのを覚えています。 2日目、この日は3回江河さんと僕の2人に初ソロチャンスが訪れます。交互に1st、2ndとチェックフライトをクリアしていき、まずは江河さんが初ソロフライトを飛びます。次は自分の番だ… しかし!ここで背風が吹き始め、まさかのピス交。チェックフライトやり直しか…初ソロを終わらせた江河さんを横目に、南向き場周のルートを確認し、迎えたピス交後一発目。うーん、少し調子が崩れてきたかもしれない。 いざ出発すると、中期上昇で曳航速度がどうも不安定になったことを強く覚えています。時折100km/hまで減速し、速度指示を出そうかと思った頃に110km/hまで再加速することを何度か繰り返していました。なぜこうなるのか戸惑いつつも、一先ずエレベーターを引き続けてピッチを維持して… バチン!!!!! 急に強烈なサブGを感じ、とっさに操縦桿を前に倒します。これがダミーってやつか。速度と高度を確認し、帰投判断。エントリーポイントに直行すればいつも通りの場周が描ける高度でした。久しぶりに操縦桿を強く後席に持たれている感覚を覚えながらも、案外冷静に帰ることができました。 降りてすぐ、松村教官に「ソロに出るか?」と聞かれました。しかし、南向き場周に不安があったので、少し間を開けてもう一度フライトすることを希望しました。 …結論から申し上げますと、このフライトがボロボロでした。正対風が吹き始めていたことを全く意識しておらず、ファイナルでのダイブ操作と速度は全く安定しない、そのままフレア操作も遅れて乱雑になってしまいました。風に順応することができませんでした。「こんなんじゃソロには出されへんぞ。」いつも温厚な松村教官に、初めて見る厳しい表情でそう言われたことを覚えています。絶望しました。ソロに出せれないと言われたことにも、それ以上に、自分の技量不足に。 一度落ち着くよう教官に伝えられ、会計係の仕事は養成君に丸投げして貴重な発数を1発割いていただき、もう一度フライトへ向かいます。しかし、このフライトも安定とは程遠いものでした。降機後R/Wワークをサボり(おい)散々悩み苦しみました。二度もあんなフライトをかましてしまえば結論は明々白々でしたが、「初ソロ」という言葉の甘い響きが、当時の私の冷静な判断を大きく狂わせました。 …今の自分は独りで飛ぶにはあまりに稚拙である。私はそのことを自覚しなくてはならない。諦めともつかない結論を得て、教官へ今回はソロを諦めることを伝えました。「はい、分かった。」 その後は、上辺だけは元気な様を取り繕い、サボっていたR/Wワークをすべく機体の元へ走って行きました。が、ピストから宿舎へ戻って会計業務を進めるよう伝えられ、結局その合宿中に7発も、発数だけを浪費して全く合宿に貢献できずに不甲斐ないまま強化合宿が終わったのでした。 … 絶望。自分には何も足りていない。形式上のチェックリストは埋まっているが、それが何だ。独りで空に飛んで、お前は帰ってこれない。悪いのは、全て俺の勉強不足だ。 帰路の車内、川端近衛のBOXについた後も、私の口数は悔しさで少ないままでした。 強化合宿の2週間後、再び木曽川での合宿に参加しました。強化合宿での悔しさをバネにすべく、この日に向けてイメージフライトやシミュレーターでの練習を繰り返し、座学をフライトに活かすために勉強し直し、迎えた自大合宿でした。 この合宿はあまり発数が回らず、午後遅い時間に1発飛びました。すると、強化合宿のときが嘘のようにうまく飛べました。この日は視程がとても良く、地平線上に名駅のビル群がはっきりと見えたことを覚えています。失速と急旋回課目をするつもりだったのをキャンセルし、のんびりと景色を見ながら飛びました。そして前回意識できなかった正対風ですが、イメージフライト通り、ピストからの風の通報をしっかりと頭に叩き込みます。加えてベースレグで偏流を取っていることに気づき、偏流の角度と景色の流れ具合から正対風を感じました。そのままファイナルへ進入。ベースで思った通りの正対風の中にグライダーがいることを感じたまま、高度を落としていき、安定したフレアを決めて着陸。自分史上最高のフライトでした。教官にもチェックOKをいただき、雪辱を果たすことができるかと意気揚々とします。 が、発数の関係でこの日のソロはお預け。しかも翌日は雨で総撤収となり、結局初ソロを逃します。 学部の試験を合否スレスレでくぐり抜け(イキって上回履修なんてするもんじゃないです)、迎えた2回生の夏休み。この夏はソロをためるぞ!と意気込んで迎えた夏休みはじめの一週間木曽川合宿は、同期もたくさんいて酷暑の木曽川においてでも非常に楽しい合宿となりました。さて、肝心のフライトですが、お怪我が治って久々に帰ってきたASK13の操縦に慣れずに不安定なままでした。しかも朝イチから南風が吹いており、初ソロコンディションとはとても言えない状況でした。 結局全日同じような状況が続き、教官方の期待を感じながらもこの合宿でも三度初ソロを逃します。最終日、会計業務で教官部屋へ向かったときに某訓練所長がこうおっしゃりました。「石川は不運だなぁ(笑)! でもすぐソロに出た訓練生はそのあと壁にぶつかるんだよ。君は今その壁に向かっているだけ。ソロなんかいつか出れる。いつ出るかは問題じゃない。気にするな。」 教官からの温かい言葉をいただき、私も考え方を改め、初ソロを目指すということに目標を置かないよう意識し始めました。しかし私のいいところなのか悪いところなのか、開き直ってしまえばとことん開き直ってしまいます。ここからもしばらくソロには出られないぞ (陽気なBGMが流れ始める) 次の合宿は久住での山岳滑翔大会でした!ソロのことは何も考えずひたすらに他地区学生との交流を楽しみました!この時点で総発数は95! 続いて、木曽川での一週間合宿に参加予定だったものがコロナの関係で参加不可に!四度ソロチャンスを逃す! 9月に入り、木曽川入りしますが今回は新人戦!3位で入賞し、審査員教官の1名に「ソロ出てないのか! もったいないなぁ」とまで言われますが、そうですソロには出ていません!総発数は99! さらに9月末の大野合宿ですが、こちらもコロナの関係で参加不可に!五度ソロチャンスを逃す! そしてそして!10月に入り夏休みが終わった後、CAB受験お手伝いのクルー参加で珍しく条件の出ている木曽川へ!しかし受験機のASK13は使用できず!教官方はASK21でのソロも考えたそうですが、受験前に万が一の事態を起こさせられないということでソロはお預け!総初数は103! 11月に入ってからは後輩の付き添いで長野へ外参!こちらでもソロに出ようと何度も教官にそそのかされるも、規則を破ることができずにソロはお預け!代わりに無限リトリブで合宿に貢献しました!総発数は108! …開き直りすぎですね、はい。どれだけ運が悪いんだ。むしろ自分から運をのない方を選んでいる気すらします。 そうして迎えたNF合宿。今回こそは!と気合を入れて合宿へ向かいます。私個人は久しぶりの大野合宿ということで、しっかり場周経路の予習をして向かいます。 1日目、この日のフライトでは技量回復と場周経路の確認を入念に行いました。基本をしっかりこなせるように、随所随所で気をつけてフライトをします。若干フレア開始が遅いことを反省しつつ、2日目へ。 そうして迎えた2日目、1発目は佐野教官との同乗でした。佐野教官は松村教官と並んで強化合宿でとてもお世話になった(そして迷惑をおかけしてしまった)教官です。あのときよりも成長した姿を見せるべく、いざフライト。離陸・上空での操作は問題ないが、フレアが若干遅く、もうワントライということになりました。これっぽっちで諦めてたまるか。こちとら半年も首を長くして待っていたんだ。今更もう1フライトなんてことはない。 続いてのチェックフライトでは反省を活かしフレアを早めにはじめ、途中で若干探ったところはあったもののチェックは通過。河村教官とのセカンドチェックに移ります。こちらでもフレアは探りつつですが、安定して着陸ができました。 ピストカーには私の代わりに同期の鈴木がおり、帰る場所もなさそうだなと辺りをウロウロしながら次の発航を待ちます。順番はすぐにやってきました。後席は戻って佐野教官。ダミーブレイクだな。そう感じつつ、今となっては乗り慣れたASK13の方へ進み、搭乗準備をします。 発航は残り索。索切れのときは右ターンですぐに場周へ向かうことをイメージして…サブGに備えます。ここは初ソロを何度も逃している石川、ダミーブレイクの経験は2回もありますので今さら緊張することもありません(それはそれでどうなんでしょうか)。出発、安全高度通過、高度150m、200m、250m…あれ?まだ切らないの?実はダミーじゃなかったのか?なんて思っていたところでバチン。すぐ滑空姿勢に移ります。高度は290m。余裕で帰れる。同時進入の心配もありません。イメージ通り右旋回をし、軽く蛇行をして高度を落とし、いつもより若干高い高度でエントリーポイントを通過。着陸では、フレアに神経を集中させ、若干指定地を逃しながらも悪くないタッチダウンを決めます。 ダミーチェックは通過。ソロフライトへ向かいます。 ここで、並行してソロチェックを受けていた3回江河さんが4thソロフライトへ出発します。それに前後して、風の変わり目を感じ始めました。強化合宿のときのトラウマが蘇る…また自分のソロの前に風が変わるのか?ソロに出るまでは堪えてくれ! 僕の心配を余所に周りは祝福ムード。後輩が同期の若林との記念写真を撮ってくれました。それは今じゃなくて帰ってきてからだろ。
若干不安な表情の筆者と若林。今じゃねーよ。 と、無事に風は耐え、いよいよ発航という頃には正対微風が吹いていました。とても不思議な気持ちでした。後ろには誰も居ないんだよな。ふーん。面白いじゃん。なんて他人事のように思っていました。 キャノピーを閉め、索着け。いつもの癖で「後席準備よろしいでしょうか」なんて聞いてみますが、当然返す人はいません。ルーティンを崩さないことを意識し、出発出発。 初めての一人の空は、思ったよりもいつも通りでした。残りの高度を勘案しながら、落ち着いたまま何回か旋回します。しかし日が高くなり、大気の流動が始まってきていたのでしょう。R/Wクロスをしたところで、-1.5m/sの沈下帯にぶつかります。大した沈下でもないし、教官が後ろにいれば冷静に加速するのですが、初ソロでこれは中々堪えました。エントリーポイントに至る頃には余裕のあった高度がなくなっており、危険域とまではいかないものの若干焦ります。 さて、読者の皆様は「恋の第3旋回」という言葉をご存知でしょうか。初ソロの第3旋回で好きな人の名前を言うとその恋が実る、という航空部に伝わるジンクスです。なんてロマンティックなんでしょうか。え?僕ですか?「パス角チェック、低いなぁ…」と言いました。初ソロ同様、恋愛の方も遅れそうです。 ファイナルはさすがに緊張しました。自分の操縦に自分の命が懸かっているというのをはっきりと感じました。しかしあくまで冷静に、いつも通りクロスチェックをこなしてファイナルアプローチ。課題だったフレアも、十分な高度で始めて安定した着陸を決めました。無事帰ってこれて安堵しました。 他の部員が駆け寄ってきてくれ、今度こそ本当の記念撮影。
さて、この3日後、2ndソロに出ました。このときは2回のチェックをそれぞれ一発で通り、1stソロ以降最短で2ndへ出ることができました。 1stソロのときにあった緊張感がなくなり、チェックも一発で通ったので気持ちは安定していました。このとき、私は操縦を少しサボって外の景色を見てみよう、と思ったのです。離陸し、エントリーまでなるべく直線飛行が多くなるように経路を考えます。 直線飛行で、操縦桿とラダーペダルから手足を離してみました。グライダーとはよくできた乗り物です。400kg近くある物体が、何もしていなくても風の力で勝手に飛んでいきます。外の景色を見てみると、地平線上にかすかに名駅のビル群が見えたり、北方の山々が紅く染まりだしているのが見えました。これまでグライダーの姿勢を知るための「目印」としてだけ見ていた地平線を、「景色」として見つめ直したのです。 結果、私にとっては1stソロよりも2ndソロのほうが記憶に残るフライトになりました。何度も何度もこの景色をまた見に来たい、そう思えるフライトだったからです。 初ソロに前後して、様々な方々にお世話になりました。知識や技術を教えていただいた先輩、ソロに行ってこいと応援してくださった教官方、そして何より、記念となるフライトを一緒に喜んでくれた同期たち。 ソロに出ることができ、私はグライダー人生を新たなステップへ進めることができました。しかし先は長いです。一先ずは単座機搭乗、そしてライセンス取得、京大Discus搭乗から、全国大会へ。その過程で、そしてその先でも、何度も何度も見に来たいと思えるような素晴らしい景色に出会えると信じ、文章を締めたいと思います。
同期4人での初ソロ記念撮影。青い空に、黄色い機体に、オレンジのつなぎ。筆者お気に入りの写真です。 |
2022年12月14日
初ソロ
posted by 京都大学体育会グライダー部 at 15:33| Comment(0)
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