2025年06月10日

初ソロ体験記

皆様、お久しぶりです。2回生の陳です。 去る528日、ついに僕も初ソロに出て、一人で大空へ飛び立つことができました。




思えば一年前、入部したての頃に聞いた鈴木さんの「4年間のロードマップ」。それに倣って「1回生のうちにソロに出て、2回生は自家用ライセンスへ」となんとなく計画を立てていました。自大合宿には皆勤で参加し、フライト回数も少しずつですが、着実に積み重ねていきました。




そして今年の3月、総フライト数も70回目前となり、「次の合宿で絶対にソロに出る!」と意気込んで挑んだ5月の大野合宿。しかし、1ヶ月半ぶりのフライトで待っていたのは、厳しい現実でした。何度飛んでも苦手なフレア操作がうまくいかず、引き起こしが甘いためにメインギアから着地するのを繰り返すばかり。そうこうしているうちに風向きが変わり、この日のソロは叶いませんでした。




その二週間後、CAB合宿のために木曽川を訪れました。 当初は2日間の参加予定でしたが、2日目のフライト後、小林教官から「いつチェックがきてもいいように、索切れの復習をしっかりやっておけ」と声をかけていただきました。
(このまま帰ったら、次のチャンスを逃すんじゃないか?) そんな思いが頭をよぎっていた時、宿舎で深尾さんが「明日も残っていきなよ」と背中を押してくれました。その一言に、僕は延泊を決意しました。




そして迎えた3日目。昼から南風が強くなる予報だったため、チャンスは静穏な午前中のみでした。 1発目は辻埜教官とのフライト。フレアがまだ不安定で「もう一回飛ぼう」と言われ、すぐに次の発航順に入れていただきました。 続く2発目。上空で失速の練習を繰り返し、フレアの感覚を体に叩き込みます。着陸は少しロングしたものの、自分でも納得のいく滑らかなフレアができました。




そして3発目。これが索切れのチェックフライトになりました。 高度、速度、滑りと、いつものように確認していた、その瞬間。 「バチンッ!!」 予兆なくレリーズが開く音と共に、高度270mで機体は曳航索から解き放たれました。すぐさま練習通りに操作を実行し、落ち着いて着陸パターンへ。



ランディング後、後席の辻埜教官から「一人で飛ぶ自信はあるか?」と尋ねられました。 迷いはありませんでした。「あります!」と即答すると、教官が無線でピストへ「次、ソロ出します」と告げる声が聞こえました。その言葉を聞いた瞬間、嬉しさと緊張がごちゃ混ぜになって、きっと僕は少し変な顔をしていたと思います。




先輩方に手伝ってもらいながら、ソロの準備はあっという間に完了しました。 キャノピーが閉まり、世界から隔絶されたコックピットで聞こえるのは自分の声だけ。「ここからは、何が起きても一人で対処するんだ」。緊張で固くなっていた足を、ふっとリラックスさせました。



同期の手塚にサムズアップを送り、索が張ると、機体はいつも以上の加速感で滑走していきます。エアボーン。 離脱して無線を入れた後、僕はしばらく言葉を失っていました。
眼下には雄大な長良川と木曽川。遠くには、大野滑空場も見えます。東に目を向ければ御嶽山や名古屋の街並み、南には伊勢湾がきらめいていました。穏やかな空気の中、グライダーの動きを全身で感じながら景色を満喫し、「この部活に入って、本当によかった」と心の底から思いました。




グライダーの世界には、「第三旋回中に好きな人の名前を叫ぶと恋が叶う」なんてジンクスがあるそうですが残念ながら、僕はずっとヨーストリングと睨めっこしていて、何を口走ったか覚えていません。これじゃ、何も叶いそうにないですね(笑)




地面が近づいてきてからは、全神経をフレア操作に集中。視界の端を白い布板がサッと通り過ぎていくのを見て、「これが指定地着陸か!」と一人、静かに感動していました。



決して器用ではない僕を、一人で飛べるまでに指導してくださった教官の皆様、そしていつも的確なアドバイスをくれた先輩方には、感謝しかありません。
これからも、皆様の格好いい背中を追いかけて練習に励んでいきます。そしていつか、自分が後輩に夢を託せる日が来ることを願って。

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posted by 京都大学体育会グライダー部 at 11:10| Comment(0) | 合宿